波乱まんじゅう記
5/12

「お前はいつも商品の原価ばかり気にしているな。それじゃだめだ!最高の材料で最高のものを作りなさい。」【長崎角煮まんじゅう】です。これでは食べていけないと父に訴えましたが「これだけしか払えないよ。」と言われてしまいます。栄司は生活していくために、どうにかしてもっと売れる商品を作ろうと懸命に商品開発に取り組みます。毎月のように新しい商品を作っては、当時ぎょうざを卸していた精肉店に持ち込み、販売してもらいました。栄司の事を可愛がってくれていた肉屋の店主、山下さんから言われた「頭がないなら体を使え」の言葉に従い、毎日毎日、試作を重ねました。そのため当時の家族の夕ご飯は、毎日、試作品の味見でした。もっと人気の出るものを!もっと売れるものを! この言葉で、栄司は売れる商品ではなく、最高の材料で美味しいものを作ることにとことんこだわることが大切だと気付かされました。そう考えたときに思い浮かんだのが、小さい頃、栄司の母が作ってくれたごちそう「豚の角煮」でした。お正月などのお祝いの席でしか食べることができなかった「とろとろの角煮」が栄司は大好きでした。栄司にとって角煮は「母の味」でもあり「幸せの味」でもありました。この味をもっと手軽に、多くの人に食べてもらいたいと作りあげたのが、ふわふわの生地に角煮を挟んだこうして、地元の人からも愛される「長崎角煮まんじゅう」が完成しました。販売当初は、順調に売れていましたが、次第に角煮まんじゅうの売れ行きは落ちていきます。なぜ売れ行きが落ちていくのか考えた結果、「角煮まんじゅうは日常品ではなく嗜好品だからこそ、地元の人が遠のくのだ」と栄司は気づいたのです。商品をたまに買ってくれる人の購入に繋がれば、もっと売れるのではないか?と考え、ある試みをします。それは、長崎ちゃんぽん・皿うどんを販売する「みろくや」さんがブレイクするきっかけとなった物産展への出店でした。栄司は、みろくやさんの販売体制をみて、すぐに長崎県の物産協会に連絡を取り、角煮まんじゅうの試食を送りました。がむしゃらな栄司に父がかけた言葉は意外なものでした。         

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る